カリフォーニエンでは売春が国営に限り、合法化されている。そんななか、国営企業として国内で唯一性風俗産業を手がける会社がこのFKKである。ここでは会社組織としてのFKKと共に、カリフォーニエンの性風俗産業や文化についても解説したい。
そもそもなぜ売春を合法化するのだろうか。一般的に言って人間の四大欲求は食欲、性欲、睡眠欲、排泄欲とされておりこれらは人間が生きていく上で、いかに高度に文明化された社会であろうと切っても切れないものである。事実これらに関する仕事はどんな文化圏にも存在し、人類が存続する限り決してなくならないだろう。例えば食欲なら飲食店、睡眠欲なら寝具や家具また住宅、排泄欲も近年では水洗トイレが備わった住宅として、それぞれの分野にはそれぞれのサービスを提供する産業がある。そして性欲にも、風俗事業といったかたちで、それは存在している。前述したように生理的な欲求に結びついた仕事のため、仮に政府や世論によって厳しく取り締まったとしても非合法・裏社会化して存続してしまうし、それは歴史が明らかにしているところでもある。事実、売春は世界で最も古い職業でもある。
18世紀欧州の売春婦を描いた絵画 |
逆に、売春を合法化して透明化された産業、事業にすることはさまざまなメリットを生む。
まず第一に治安の向上が挙げられる。売春が合法化されていない社会であったとしても、人間の欲求を満たすことで社会秩序の維持と治安の向上に寄与することは全く否定されていない。極端な話、そういった職業や産業を一才禁止して厳しく取り締まったなら、女性や社会的弱者への性犯罪被害は増加するだろう。一夫一妻制が定着し、人々の道徳的価値観が変化してきた現代では、とかく汚いものとして見られがちなこの産業ではあるが、社会秩序を守り治安維持に貢献するといった大切な役割を果たしているのである。
第二に、公衆衛生の向上も見込める。非合法化された売春では、従業員が健康を悪化しても摘発を恐れて、適切な治療を受けられないケースが多い。一方で合法化されきちんと管理された事業所では、性感染症の蔓延を最小限にとどめ、そこではたらく人々の健康を守る事にもなる。望まない妊娠やそれによって副次的に生じる中絶また育児放棄といったことも防ぐことにつながる。
第三に、売春婦の地位向上である。現代でこそそのようなことも少なくなってきたが、以前は仕事にも食べるのにも困っている女性が、最後にすることが自分の身体を売ることだった。それゆえに劣悪な労働環境で長時間酷使され、その割に低賃金で泣き寝入りさせられることも珍しくなかった。非合法な仕事ゆえに公的相談窓口を頼れないのである。これも法に則って適切に管理された職場であれば、そのような事もどんどん少なくなってゆく。従業員の女性たちにも適正賃金が払われ、QOLは大幅に向上することだろう。こういったメリットもあるのだ。
売春を合法化することはメリットしかない、と言い切りはしないが、上記に挙げたようにメリットが大きいのもまた事実である。さらにこれを国営化してしまうとどうだろうか。それは国の収益につながる。近年一部の国では国主導でIR施設(統合型リゾート)の誘致を目指しているが、それも同様の理由による。こういった観点から、従来の売春宿があつまる地域が特に多かったハワイにて、カリフォーニエンの国営風俗FKKが始まっていった。
現在のカリフォーニエンで、FKK以外に性風俗産業は存在しないとされている。そのためただ単に「FKK」と言うと、産業としての存在より後述する遊戯施設を一般的には指すことになる。近年は世界中から観光客も集まってきており、ただ単に性サービスを行うだけでなくカジノや映画館、カラオケなどと両立させている場所もある。明らかにインバウンド需要を狙ったものだが、実際業績は上がっている。さらに女性従業員(カリフォーニエンでは「売春婦」という呼称は相応しくないとされる)も国外からも集まるといった状況が発生している。